少年との話

ある日いつものように釣りに出かけました。もちろん狙いはブラックバス。場所は大阪の某有名ポイント。

人が多いためか、はたまた数日前から襲ってきた寒波の影響か、魚の活性が低くなかなか釣れない時間が続きます。
そんな最中、隣で釣りをしていたのが名前も知らないとある少年でした。この少年がオノマトペ誕生のキッカケとなります。

釣り人達の間では、その時のフィールドで出会った人と話す文化があります。

釣果が気になるのか、釣れるルアーが知りたいのか、釣れなくて持て余した時間を潰す為なのか。
理由はどうであれ、とにかく知らない人同士でも会話をしてしまうという良い文化だと感じています。

釣れずに持て余した時間、隣の少年といつも通り話をしました。

「なかなか釣れへんなぁ」「ここへはよく来るん?」「どんなルアー使ってるん?」

彼はこの辺りが地元で自転車でよく釣りをしにこのポイントへ来ているとのこと。
そうこうしているうちに、私が1匹、また1匹と釣れたのです。すると少年が私に聞いてきました。

「なんのルアーで釣れたんですか?」
「シャッドで釣れた!ワームじゃなくて固いルアーを素早く動かした方が反応するかも!」

ルアーは固い素材でできたハードルアーと柔らかい素材でできたソフトルアーの2種類に分けられます。その場にいた釣り人の大半がソフトルアーを使用していたこともあり、ハードルアーの方が今は当たるかもしれない、と伝えました。すると少し間を置いて少年がこう答えます。

「こんな根がかりの多い所でハードルアーは投げれない。無くすのが怖いし痛い。」

根がかりとは木や岩、水草などの障害物にルアーが引っかかってしまうことを指します。一度根がかりを起こすと外せることもありますが、外せなかった場合、ルアーを失うことになります。ハードルアーは相対的に値段が高く、無くした時のダメージが大きい。だから釣れるかもしれないけれど怖くて投げれない、とのことでした。

その時ハッとしました。

この少年も含めて、子ども達は少ないお小遣いの中で工夫しながら釣具を買って釣りを楽しんでいる。そういえば自分も子どもの頃は欲しい釣具があってもなかなか買えなかった。さらに自分の子どもの頃に比べるとルアーの値段も上がっている。

子どもたちが気軽に釣りを楽しめなくなっているのではないか…?そう感じました。

その瞬間に竿を片付け家に帰り、ルアーの値段や製造について調べました。

これが、ONOMATOPOEIAの始まりです。